5年前の今日、最初の手術から約半月したときに転移がわかりました。
「ご家族を呼んでいただいていいですか?」
先生にそう言われた瞬間に察しはついた。
退院が延びている理由はリンパが出て止まらない事だけではなかったんだな、やっぱり。
「家族は午後に来ます。その前に呼びますが今ワタシに教えてください」って言ってみたが、
「ご家族が揃ってからお話ししますね」と。
そしたらそのすぐ後に妹が突然現れたのです。
「えへへ、退院だと思うから早めに手伝いにきたよ」って。
本当に偶然でした。
先生と相談室のテーブルを囲み検査結果を聞き、今後の治療方針の説明を受けた。
直ぐに再手術。
リンパに転移が見つかってしまいその摘出手術を行ない、その後はすぐに抗がん剤治療に入るとのこと。
1度目の手術はどちらかというと「がんなんか今時みんななるよね。ちょっと先に経験するだけ。」そんな言い聞かせをしながら臨んだ手術だった。
しかし今回は違う。
ステージも昨日までの初期ではなくすごく上がってしまったものでした。
いつもおとなしい妹が先生に対して詳しい説明を求め、手術する事を拒否していた。
一月に2回なんて無理です。
抗がん剤の副作用は?
どうして最初の手術でわからなかったのですか?
いつも冷静な妹の口から次々に出る質問を聞きながら少し、その妹の姿に驚いていた。
一旦は手術を拒否した妹が、先生の説明を受け、ワタシの希望を優先してくれた。
先生も「当日の朝まで悩んでいいですよ、手術室はちゃんと抑えますから」と言ってくださった。
病室に戻ると同室の友人たちが帰りを待ってくれていて、みんなに状況を話しながらとうとうワタシのココロの中は現実味を帯びてきた。
転移。
これから先の治療、生活、仕事、自分自身の心のこと。
全く整理が出来なかった。
優香ちゃんが驚いていた。
その時既に彼女も転移を経験していてワタシの胸のうちをよく理解したようだった。
翌日から再手術の検査などを行い手術3日前の、再入院までの5日間だけ一時帰宅を許可してもらい、諸々の準備をすることになった。
誕生日は自宅でお祝いしたいよねと先生のはからいでその日、帰った。
誕生日。
友人たちが入れ替わりお祝いに来てくれたが、
お祝いと言うよりもお見舞いかな、気持ちは。
明るい話題を重ねて、みんな涙をこらえながら笑って手を振って帰っていく。
翌日からは色んな準備や片付けをする。
この数日間は本当に静かに流れていった。
なんだか自分の気持ちを吹っ切る為に、どうせ抗がん剤治療をするのだからと髪を切りにいく。
暫く行けないからとお寿司を食べに行く。
色んな事を思いながら刻々と過ぎて行く。
保険会社に連絡をする。
ウイッグを準備する。
会社に出向き、状況を説明しがんであることをきちんと伝えていなかった事を上司を通じて仲間たちに社内通達してもらう。
取引先の研修を担当していたので挨拶にいきお詫びをする。
淡々と事を進めながらココロの中はどこか上の空。
悔しいと思いながら、仕方ないと思う。
手術してとってしまえば治ると思いながら、最悪の事を考える。
これからワタシ、どうなっていくんだろう。
そんな5年前の11月のはじまりでした。