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病人レポート10 ; 「夜中に自分をアップデートする」

今日で生まれ変わりからほぼ1ヶ月が経ちました。このひとつき、あまりに状況的にどん底すぎて詳細なことを覚えていないのが正直なところですが、小さな変化は1週間、大きな変化は2週間単位くらいで起き続けたなと感じます。人間の摂理ってよくできているものです。

みなさまからのメッセージを朝に晩に発見しながらも、すぐに返信すること叶わぬ身体の状態ですみません。拝読できてもモルヒネのせいで頭の整理が付けづらかったり、なかなかうまく文章にまとまらなかったり、ひどい痙攣が時々起こるので、タイピングをやり直さねばならないなど。。脳神経的な不自由も続いておりました。。。

日常的には相変わらず、37.5−38.5度くらいの熱発を行き来したり、断続的な下痢や何より今回は全身の皮膚の炎症がひどく、、寝ても覚めても強い痒みが猛威を振るって来るという症状が続きました。薬を塗っても塗っても焼けつくように皮膚が痒く、どうしようもない日々でした。

それだけでもきついのに、口の中も炎症起こり放題で、、あちこちの口内炎から出血、、水の1滴飲見込めません、、これらも知っている、通ったことがある道のことばかりとはいえ、ああ出た出た、、本当にもうこれは人間として生きていける状態じゃなくなるやつだと思い知らされることばかり、、、「痒い」というのは「痛い」と同じくもうどうにも太刀打ちできないもので、時が過ぎるのを待つばかりでした。。。

ただこれらの状況も先週くらいからやっと「峠を越える」というのを意識できるようになってきました。昨日と今日を比べて劇的に何かが良くなっていたり、改善されているということを自覚できることは少ないのですが、当番になってくれる看護士さんたちに「この間担当させていただいた時より随分よくなりましたね」と嬉しい指摘箇所を得ることで「ああ、今週はこの辺が良くなってきてるんだな」と思える感じです。

そしてここ数週は自分のアップデート時間が夜中に以降しつつあり、ほとんど口から食してないので、出てくるものは液体のみなのですが、非常に苦しい胃痛(胃液の上がり下がり)に毎夜襲われていました。

そんな折、ドアの向こうへ耳を済ましてみると、、、同じように扉の先で自分をアップデートしているおじさんの声が人知れず病棟に響いているのが聞こえました。声というよりそれはもう、うめきというか、すさまじい人間の生きる底力、うなりというか、、「今日もがんばれえええ!!!」と心の中でおじさんの背中をさすらずにはおられないような地響きでした。

そしてこの扉がさらに世界無数のドアの先やベッドの上に繋がっていることを想像してみれば、明けない夜はないことをイメージして自分と向き合っているたくさんの方がいることも心強く身近に想像ができました。吐くものさえない身体からさらに何かを絞り出すのはただただ孤独でしんどい作業でありますが、一方でみな、新しい自分、新しい未来に向かって自分を研ぎ澄ましているのだと思えるのです。そうやって自分を解体し尽くし、新しい自分を得ていく。

身体は薄皮を1枚剥がされるごとに脱皮して、前に向かって進んでいく。。

だから今、どれだけ吐いていても、熱があっても、酷い下痢に苦しんでいても、それらが止まない朝は無いと信じられます。この闇の向こうには「明日の朝」がいつも待っています。その「明日」の積み上げの向こうには大きな「未来」も待っている。。これを忘れず、焦らず、、今日も自分といういのちを自分で光らせて生きたいと願う。。。そんなイメトレを同時にしつつ遣り過ごして来た1ヶ月でした。。。

どん底をもう何度も見たから、ここからは浮上するだけ。浮上するための最初の大事な関門はいくつか越えられたと思っています。いつもみなさまのお力添え、本当にありがとうございます。まだまだ越えなければならない関門はたくさんあり、まだ全行程の4-5合目といったところである気がしますが、焦らず一歩ずつ、春に向かって歩いて行きたいと思います。

写真はとある夜中の東京タワーと月。
眠れない夜、自分一人じゃないことを思い出して。
2019.2.20

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