昨年春にがんと診断され手術する事も出来ず抗がん剤治療を繰り返している方がいらしてくださいました。
とてもキレイな夏らしいエレガントなお召し物でお帽子もそれに合わせて、だけど歩きやすいようにジョギングシューズです。
髪の毛は生えてきたと言う事で元気な毛がふさふさと、まだ短いですが生えています。
だけれどお顔色がやはり治療中を物語っています。
全体的に黒ずんでおり、目元には広く色素沈着したしみが広がっています。
脂焼けしたようなくすみも出ており健康的な笑顔とは裏腹に、苦しい治療を物語っているようです。
普段は大きなマスクをしてサングラスをかけて夕方に出かけるの・・・と笑いながらおっしゃいました。
だけど今日は午後から出かけたいのでメイクを教えて欲しいと。
病院でも教えてもらって色んな方法も知った。
だけど今日は特別な日にしたいのと。
沢山の事をマシンガンのように聞かせてくださった後にメイクに入りました。
スキンケアで整えていざスタート。
いくつものコンシーラを使い分けてベースを作ります。
そして少し濃いめのファンデーションにハイライトとシャドウを使い分けてお顔のメリハリを出していきます。
元々が彫りの深い方なので特別なものはいらないのですが、コンシーラでマットに仕上げている分そこはきちんと作ります。
眉を描き、ご希望の色味のアイシャドウを入れ、付けまつ毛をつけてラインを引く。
チークを濃淡を見ながら全体に入れて口紅をつけます。
鏡を覗き込んで「わ〜キレイ」と言葉がついて出てきました。
「うれしいわぁ、すごい、キレイ!」初めてメイクをした少女のように笑顔いっぱいでうれしい言葉を連発してくださってこちらの方が感激してしまいました。
姿見で全体を見て改めて感動してくださって表情も更に和んでいました。
こんなにも変わった姿を誇らしげに、自分を労るように喜んでくださるなんてワタシの心臓が破裂しそうになりました。
一時抗がん剤を止めていたそうです。
もうなにもしたくないと。
医師に「何もしなかったらあと半年」と言われた瞬間に
「今年中になんて死にたくない!って変な日本語で言ったのよ、私」って。
それで治療を再開したそうです。
お土産を頂きました。
ツシマヤマネコの絵ののったお米です。
偶然にそのお米と出会ったそうです。
この猫ちゃんが可愛くて・・・。
このお米を買う事で絶滅危惧種であるツシマヤマネコを救う事にもなると知って誰かにプレゼントを考える時は購入されるそうです。
「何十億もいる人間の中、私一人が死んでもどうって事ないでしょ。
でも100頭くらいに減っている彼らを救わなければいけないと思うのよ。
そこには行けないけれどこうやっている事も助けになるのであれば協力したいと思うの」って気恥ずかしそうに仰った。
「ダメ!自分も必ず行ってください。対馬に行ってツシマヤマネコに会ってきてください。」
「そうね、船は大変そうだけど飛行機なら行けるかな・・・」って。
そうですよ、海への散骨を決める勇気が有るのなら対馬だってどこだっていけますよ。
行きたい所、やりたい事、会いたい人、食べたい物、色々考えるだけでやり残した事沢山有るんだからまだまだ弱音をはいちゃダメです!
「ここはもっと多くの人に知ってもらうべきよ。」
はい、ありがとうございます。そうですね、きっとそうです。今日更に感じました。
「もう来れないかもしれないけど・・・会えてよかった。」
い〜え、ワタシはまたお会いするの待ってますからね。
また沢山の情報をください。
お米の事や、サングラスの事、お帽子の事、アクセサリーの事、絵の事、銀細工の事、今日作ると言っていた風鈴の事。
沢山教えてください。
ワタシは今日お会いして少し強くなった気がします。
最近少しへこたれていたから優しく喝を入れて頂いたような・・・。
絶対に、待っています。